世界ぐるっと朝食紀行
朝食、という響きに昔から弱い。
旅先で、朝食がたべられる、と考えただけで
誰よりも早起きをして、外に出かけたくてやもたてもたまらなくなる。
ヨーロッパの街角で出会った、濃厚なバターをねりこんだクロワッサンと
カフェオレだけの朝食。
チャイナ・タウンで朝から奮発した牡蠣入りのお粥。
ホーチミンの中心部を早朝から散歩してまわって、見つけた
フォーのお店で頼んだ山盛りハーブと鶏入りうどん。
朝ごはんの屋台を物色して、何を食べようかあれこれ迷う瞬間は
旅先のいちばんの楽しみと言い切っても過言ではない。と思う。
「世界ぐるっと朝食紀行」は
写真家、文筆家として多彩な活動を続ける西川治の著書。
この小さな本には、心踊る無数の写真とともに
そんな旅先の朝食にまつわる緻密なエピソードが
ぎっしり詰まっている。
朝食はフォーに限る
という章の冒頭はこんなふうだ。
『フォー屋は、もっとも朝早くから動きはじめる。たいてい五時には、
準備がはじまる。
こんろに火をおこす。
スープを熱くする。
フォーを茹でる湯を沸かす。
野菜を刻む。』
あとは流し込むだけなのだ。
おなかがすいて研ぎすまされた、五感がすべてを咀嚼してくれるままに。
そして、知らない街角ではじめて食べる朝食は
異文化を無条件に受け入れられる最初の瞬間なのだと、改めて
気づかせてもくれる本だ。
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