怪しいシンドバッド/高野 秀行
表紙のイラストはいまいちだが、中身はぴかいち。
未知を求めて世界の辺境へ。懲りない冒険記。
コンゴに怪獣探しに。幻の幻覚剤を求めて南米に。インドでダマされ無一文に。
「未知なるもの」を求め、懲りずに出かけては災難に遭う
ワセダ探検部出身・高野氏の傑作冒険記。
インドで無一文になったくだりでは「一文無しというのは、スカーンと晴れた青空のようなもので、
それ以上でもなければ、それ以下でもない」と、どこまでも脳天気。
語学の才能があるらしく、
コンゴやザイールで、現地の人を驚かせ喜ばせるためだけに、
リンガラ語などもマスターしている。
コンゴではスパイとカン違いされて秘密警察につけねらわれたり、
コロンビアでは紛争地帯にまぎれこんでしまったり、
命があるのは、幸運だからなのだろう。
軽い旅行記だろうとなめてかかったら、
目からウロコがぼろぼろ落ちた。
中国の客家(ハッカ)が暮らす集合住宅のレポートも、
そこにたどりつく経緯もものすごくて、ぐいぐい読ませる。
語り口は軽妙で、思わず笑いがこみあげてくるが
文章には品がある。
この作家の
「ミャンマーの柳生一族」もおすすめだ。
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