東野圭吾 『手紙』

だてBLOGスタッフ

2006年11月21日 20:30



差別や偏見はおもちろんありますが、
それを乗り越えていく、というドラマではないんです。
一言でいえば、乗り越えることができない、というドラマです。

親のいない、兄弟の兄が強盗殺人を犯します。
弟を大学にいかせるための費用が欲しくて、
金持ちの家に忍び込むんですが、老婆が出てきて
狼狽して、思わず殺してしまう。
そんな思わず、がすべての発端です。

もちろん兄は刑務所に入り、一生刑務所で罪を償いながら
暮らすことになり、弟に手紙を書くんですね、何も知らず。
この物語は残された弟の、非常に生き難い物語です。

弟はどこに行っても何をしても幸せにはなれないんです。
上っ面はどんなに平等に接してくれていても
やはり誰も凶悪犯と血のつながっている人とは深くはかかわりたくないんです。
当然だと思います。

やり場のない怒りと、ささやかな幸せ。
新たな家庭を持ったとき、弟はある決心をします。

すごいですよ、その決心。


家族って温かいだけじゃなく、過酷だな、と思いました。

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